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白樺寄語

中国近代建築・史跡・中国語・中国生活

   

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奉天沙河会戦跡(遼寧省瀋陽市)

遼寧省瀋陽市の蘇家屯沙舖郷魏家楼子村に日露戦争奉天会戦の軌跡が残されている。





東煙龍山(別名:万宝山)の南北の丘に建てられている
「奉天会戦日本第四軍戦績碑」と「帝政ロシア戦没将士碑」がそれだ。


(写真奥の丘の上に見えるのが「帝政ロシア戦没将士碑」)

1904年2月10日に起きた日露戦争は、幾多の会戦を経た後、劣勢となった
ロシア軍が同年9月に一旦遼陽から奉天(現遼寧省瀋陽市)まで撤退。
が、日本軍の追撃がないことを知ると奉天南方に位置する沙河方面まで南下を始め、
日本軍と衝突することになる。後に「沙河会戦」と呼ばれる主戦場がここだ。

1904年10月16日、日本軍第四軍の山田支隊は蛇山子(陳相屯郷)及び家
洼子(沙舖郷)から沙河南岸の万宝山に向けて進行。
ロシア軍は士気に欠け、4万人の死者を出し沙河北岸に撤退。
両軍は沙河を挟んで一冬の対峙を行うことになる。(「沙河の対陣」)

1905年1月26日、ロシア軍はヨーロッパ戦線からの増兵を受け、
日本軍左翼である黒溝台方面を奇襲。日本軍総司令は第八、第五、第二師団を
投入し、戦いは三昼夜に及ぶもこれを撃破。

1905年2月下旬、第四軍第六師団万宝山付近に結集、27日に万宝山の
ロシア軍に総攻撃を加える。七昼夜の激戦の末、ロシア軍を敗走させ
万宝山の占領に成功するが、第四軍四十一連隊長鵜澤大佐および29名の将士、
812名の隊士が戦士するという壮絶なものであった。


1911年、日本はこの大規模な陸戦に戦勝したことの記念として、
蘇家屯沙舖郷魏家楼子村に「第四軍戦績碑」を建立する。


日本が立てた戦績碑。写真左手の鉄骨製の物体の用途は不明。
見る限り、最近建てられたものだ。


「奉天会戦第四軍戦績」と刻まれている。


戦績碑裏。石碑が埋め込まれていたようにも見えるが、遺失している。


遼寧省瀋陽市人民政府・瀋陽市文物管理委員会が1985年に文物保護指定をしている。


1912年には、日本政府の同意を得た上でロシアが慰霊碑を建立。



南山の日本の戦績碑から500Mと離れた北山にあり、
丁度両者が対峙する形になっている。


慰霊碑の上部には「聖母マリア」が描かれ、その下にはロシア語で文字が
刻まれている。


石碑には無数の弾痕のような跡があり、肖像もぐちゃぐちゃになっている。
(弾痕かどうかは不明。開けた丘の上にあるため、石などが飛んで当たるのかもしれない。)


慰霊碑裏。裏側上部に描かれているのは「キリスト」だろうか。


日本の戦績碑に同じく、1985年に文物保護指定がなされている。
「沙俄(shā é)」とは、「沙皇俄国(shā huáng é gúo)」、帝政ロシアのこと。
※「沙皇」とはロシア帝政君主を指す称号「ツァーリ」の中国語。


日本の戦績碑と異なり、文物指定の石碑は2枚あったようだが、
1枚は遺失している。



写真からも分かる通り、2つの碑は畑の真ん中にあり、
舗装もされていない道を車で走り、近隣の村民に場所を聞いたりして
ようやくたどり着くことができた。(両方とも丘の上で日当たりが良いせいか
一部近隣住民の墓地となっていた。)

ひとつ興味深かったのは、日本の戦績碑、ロシアの慰霊碑ともに
隣に井戸のようなレンガで囲われた大きな穴があったこと。
ロシアの慰霊碑のそれには蓋がしてあり、「解放軍」の文字もあった。
中をのぞいても特に何があるわけでもなく用途不明。
日本の戦跡碑の方はレンガも崩れ、皆目検討もつかない。
解放軍が戦跡を基に何かの研究などをしていたのだろうか。

日本の戦績碑の隣に立てられた鉄骨製の物体も謎だ。
見たところ測量か何かの器具にも見える。


2つ碑の間には村があったが、住宅造成地区となっており、
村民は立ち退き、家屋の取り壊しが行われていた。

100年以上も昔の歴史の痕跡が、このように現在も存在することは
感慨深いものがある。文物保護の指定がなされている意味を理解し、
歴史を後世に残そうとする心ある人たちがいることに期待。

(この場所を見つけるのに同行してくれた友人C氏と運転手に感謝)


<参考資料>
http://baike.baidu.com/view/476455.htm
http://www.sakanouenokumo.com/saka.htm
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BB%92%E6%BA%9D%E5%8F%B0%E4%BC%9A%E6%88%A6

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